F organicsが目指す「自分らしいウェルネスな生活」のため、国内外で活躍する女性たちに日々の生活や美しさを保つための考えをインタビューする「Indi-visual wellness」。
今回は、ロンドンでファッションブランド「Colenimo(コレニモ)」を手がけるデザイナーの中川綾さんを訪ねました。そのアトリエがあるのは、イーストロンドンのショーディッチ。流行の発信地として知られるレッドチャーチ・ストリートに近くも、そこを知らなければ通り過ぎてしまいそうな集合住宅裏にある長屋の一角です。実はこの長屋、デザイナーやアーティストたちのスタジオなどが並ぶクリエイティブな建物。この場所で中川さんは、毎週日曜に自らの洋服を販売しています。
なぜロンドンを選んだのでしょうか。
子どもの頃からロンドンに憧れがあって、学生の時には28歳になったらロンドンで2年を過ごそうと心に決めていたんです。ファッションを学んだあとにアパレルメーカーでデザイナーとして勤務しながら貯金をして、予定より遅くはなったものの29歳で実行に移しました。当初は学生ビザを取得して語学学校に通っていましたが、そのうち何も生み出していない時間に不安を感じるようになったんです。そこで仕事を体験できるプログラムを取得してテキスタイルスタジオに足を運びました。生地にハサミを入れた時、やはり私は服を作ることが好きだと強く思ったんです。
ユニークなブランド名です。その由来を教えてください。
ブランド名には「これにも足していく」という意味を込めています。テーマとして掲げるのは「My mum’s closet」。いつか母のクローゼットから娘が「コレニモ」の服を抜き出し、それを着て褒められたときに「母のものなの」と誇らしげに答えられるようなものにしたいんです。タイムレスでエレガンス、そしてクオリティの高いものを目指しています。いまは、日曜になるとアトリエを開けてお客さんが訪ねてきます。そこで話とともに服を試していく。こうしていくうちに、半年ごとに変わっていくファッションのペースについていけなくなりました。古いデザインといまのデザインが混じり合って作られる世界観。流行で動かず、古くならないデザインがいいものだと思うようになりました。
中川さんにとってロンドンはどのような街ですか。
ロンドンはどこか人との距離が近いのかもしれません。なにか面白いと思うと聞かずにはいられないのか、たとえば道ですれ違う人に「それはどこで買ったの?」と聞かれることも。日本ではジェントルマンの国として知られていますが、私はジェントルマンとはクールというよりもフレンドリーであるように感じます。そして彼らは人と違う行動に価値を見出すように感じます。私も東京にいたら「コレニモ」をやっていないかも。これはこうじゃないといけないという定義を作らない。郵便物は届かないし、電車も遅れる。けれど私たちはロボットじゃないし、どれも人がやっていることなので仕方ないこともありますよね。常識という言葉で片付けられるのは好きではないし、日本で暮らしているときにモヤっととしていたものがこちらにきてクリアになりました。雨が続いて洗濯物が乾かない日もある。もちろん困るけど、それさえも愛おしいんです。
美しさを保つためになにかしていることはありますか。
私はヨガにも行かないし、オーガニックに積極的でもありません。そういうことに囚われて時間をコントロールされるのは、かえって不健康な感じがしてしまうんです。大切にしたいのは、タイムレスであり、シンプルであること。もちろんこれまでにいろいろな失敗があったし、ミスや気づきもあっていまがあるように思います。それは洋服もコスメも同じ。若い時はいろいろなことに興味があって、20代のころは挑戦を続けました。30代になって一歩ずつ進むことを覚えて、40代になったいまは一本の道にたどり着いたように感じます。そのうえで、いまは好きなことを全部やってみるんです。ミニマリストだとつまらないし、働く時間って一生のうちごくわずかじゃないですか。
「タイムレスにシンプルに」。その彼女の思考自体がウェルネスを生み出しているのでしょう。そして時の流れとともに変化する自分自身にも正直に。シンプルになった今だからこそ、好きなことを全部やる。そんな彼女の今後がとても楽しみです。