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Indi-visual wellness あなた自身がデザインするウェルネスライフを

INTERVIEW Vol.7 須山佳子さん Keiko Suyama PARIS, FRANCE

F organicsが目指す「自分らしいウェルネスな生活」のため、国内外で活躍する女性たちに日々の生活や美しさを保つための考えをインタビューする「Indi-visual wellness」。最終回は、パリでビューティー&デザインのコンサルティング会社を経営する須山佳子さんにお話を聞きました。美をテーマに日本と海外をさまざまなモノとコトで繋ぐ須山さんは、どのように自身の仕事を築き、活動されているのか。プライベートなエピソードも含んだインタビューは長時間にわたり、濃密な人生そのものに迫るものとなりました。

パリで暮らすようになった経緯を教えてください。 パリに来たのは2001年10月のことです。高校時代からファッションに興味を持ち、日本の大学では美学・西洋哲学を専攻していたのですが、春休みになるとどうしてもファッションの本場パリコレを見たいと思い、パリに渡ってインビテーションもなしにショー会場にひたすら並び続け、最後になんとか入れてもらいショーを見るということを続けていました。そうするうちに新聞社の記者たちが面白いといって声をかけて下さり、アルバイト作業を兼ねていっしょにショーに入れてもらえるようになりました。私自身もファッションの素晴らしさをより多くの人たちに伝えたくて、大学創立80周年の記念すべき年の学園祭に大学の大先輩である森英恵さんにオートクチュールのファッションショーを開催して頂く企画を立ち上げました。慣れない企画書を何十通と書き、森さんの会社に送り続けました。なんだかよくわからない学生が会社に来るし手紙が届く……やがて知人を介して森さんを正式に紹介していただき、その熱意を評価していただけてショーを実施することができたんです。会場前で初めて森さんとお会いした時に、「あなたのためにやって来ましたよ!」と声をかけて頂いたことをいまでも忘れません。森さんとはその後も何度かパリで食事をご一緒させて頂き、強く憧れる女性の一人です。それがきっかけで大学のファッションサークルを掛け持ちし、さまざまなショーを企画することになりました。やがて雑誌で記事を書いたり夜間のファッション専門学校に通ったり、とにかく忙しい学生時代でした。卒業後は就職するつもりがなく、パリのファッション界で仕事がしたいという想いだけで半年間お金を貯めて学生ビザを取って渡仏しました。目標はとにかく挑戦すること。メディアへの寄稿やコーディネートの仕事をしながらフランス語を覚えていきました。

実際にファッションの仕事に携わられるようになったきっかけを教えてください。

2002年にファッションデザイナーの星野貞治さんと出会ったことが大きな転機になりました。彼の才能と出会い、ビックメゾンに誘われていた彼を引き止め、ブランドを設立してパリコレに出ようと説得しました。翌年には某ブランドのショーが終わった直後の会場でゲリラショーを行いました。それが新聞に取り上げられ国内外からバイイングされることに。当時の私たちは「怖いものしらず」。学生上がりで布も買えないから、蚤の市で古着を買ってリメイクで新作を作ったりしていました。それからは土日もなく記憶にないくらい忙しい毎日でしたね。2004年に「es」という名でブランドを設立し、パリ・コレクションの正式カレンダーにも載るようになって、私は生産管理から販売・PRまで服作り以外のすべてを担当していました。けれどショーをやったからといって商品が売れるわけではないんですよね。無名の若手デザイナーということで門前払いは当たり前の世界。アジア、ヨーロッパ、アメリカと、とにかく朝から晩まで一日中電話をかけて売り込み、まったく相手にされないまま一日があっという間に終わってしまうこともありました。その頃はアーティストから又借りした壁も崩れてボロボロのアトリエ兼自宅に住んでいて、プライベートがまったくない中で寝ても覚めても仕事をしていました。けれどそのアトリエを家主の都合で追い出され、生産が難しくなって2008年末にブランドをクローズします。この経験であらためて計画性とマネージメントの重要性を痛感するようになりました。

現在のお仕事はどんなきっかけで始められたのですか。

一度まっさらな状態に戻ったところで、ビューティーの展示会に出る日本のメーカーから美顔器をセールスして欲しいと相談を受けます。ファッションは年2回何十型を発表するのに対し、機器1つを長く販売するビジネスモデルがとても新鮮でした。そこでもう一度ビジネスの面白さを学び、あらためてファッション経営を学ぶため大学院に通い、NYと香港の提携大学にも通ってMBAを取得しました。そして、並行して海外進出を希望する日本のコスメブランドを欧州のバイヤーやジャーナリストたちに紹介する仕事を始めました。日本は特殊なマーケットで、海外の生活習慣と合わない商品も多く、私はそれをチューニングしながら各国にセールス&コミュニケーションしています。最近は、フランスだけに留まらず、イギリス、北欧、東欧から南アフリカなど約20カ国・100店舗近い取引先が増え、あらためて世界は広いと痛感し、伝える仕事の楽しさを実感しています。日本のブランドにはまだまだ可能性があり、世界に出る手伝いをしたい。ここ数年はフランスのお客様に日本人の美意識とライフスタイルを紹介するためのポップアップストア「Bijo;(ビジョ)」を定期的に開催しています。ここ数ヶ月は老舗百貨店のル・ボンマルシェにも2度招待いただき、1階の大きなメインステージで数週間にわたって日本の美をテーマにしたポップアップストアを行うチャンスをもらいました。このポップアップは次にロンドンとニューヨークで開催するんです。そして近いうちに私自身が出会ってきた美にまつわるさまざまなプロダクト、美意識が感じられる選りすぐりのブランドを集めたショールーム兼ショップを開く予定もあります。パリはとても小さな街ですが、世界へのショーウィンドウとして唯一無二の特別な街。小さくても自分の美学とクリエイティビティーを世界に向けて発信していきたい。それが次のステップだと考えています。

ご自身のウェルネスについてはどう考えていますか。

実は大学院を卒業するタイミングで日本に一時帰国し、健康診断を受けたところ癌を発見します。症状は重かったのですが、日本で一日中病院の中で検査を受け続けることが性に合わず、自らフランスの癌センターへ行き手術を受けました。病気になったことで考え方は大きく変わりましたね。がむしゃらに仕事をすれば結果がでると思っていたけれど結果として身体が悲鳴をあげてしまった。死んでしまっては元も子もない。療養に長い時間がかかり、あらためて生きる意味と人生の豊かさを考えるようになりました。術後はまわりの人々に助けられ、一人で生きているのではないことも痛感しました。翌年には長年パートナーであった星野さんと結婚し、仕事や人との接し方も大きく変わったように思います。人生は永遠ではないし、その時々でどうやって自分のなりたい女性像になっていくかを深く考えたんです。

それはどのような女性像でしょうか。

その後も一度、大きな病気を経験しました。その時は愛犬が突然数週間の余命宣告を受け、同時に大きなイベントの仕事が重なりストレスが多く不安定な時期だったんです。その時も、病院に着くと同時に手術という生死をさまよう大病でした。仕事には中毒性があり、楽しいといっても無意識にストレスが貯まります。いまは私が好きなチームと好きな仕事を選ぶようになりました。仕事のやり方としては常にリスクを取り責任を持って挑んでいますが、心はいつも豊かでウェルネスだし、私にはこのリズムが合っています。私はいま、自分らしくいられるヒューマンサイズの規模感で、自由に、夢を見続け、最大限のパフォーマンスを発揮したいと考えています。最近は禅思想研究者の父が、「仕事のなかに人生があるのではなく、人生のなかに仕事がある」と言っていたことを良く思い出します。

今後の目標を教えて下さい。

それでも、楽しいので一生仕事をしているんだと思います(笑)。ただ40代になって、私にとってのウェルネスとは心と身体のバランスを保つことだとわかりはじめてきました。仕事とプライべートをはっきり分け、週末には近所の大きな公園や森へ行き、美しいものを見るために美術館やバレエ鑑賞を楽しんでいます。パリに来て美しい街並みと本物に触れ、文化的な豊かさを知りました。日常の些細な喜びは人を豊かにするし、そこで見出した自分の好きなものとの暮らしが大切です。そして美しさとは外見だけでなく、話し方やその人の立ち振る舞いに表れるのだと感じています。これまでの人生を振り返り、私は一度も就職をせず、上司もいず(笑)、自分の人生を自分で切り開いてきたという自負があります。だからどんなことにも挑みたいし、どんな人と会ってもコミュニケーションを重ね相手を理解する力を育ててきました。実は、もう一度星野さんと挑みたいプロジェクトがあるんです。いまはそれを叶えるための修行期間でもあると考えています。20代で憧れのパリコレに挑戦しやりたいことをやってきたからこそ、いまは学びや経験を蓄える時期。このパリの街から、私たちが世界に向けて発信する新たな企画に期待いただきたいですね。

そのエレガントな見た目とは裏腹に、自分の意志を貫き、何事も道を切り開いていく強さに心打たれました。極限まで自分の気持ちに素直で、いつまでも好奇心を忘れない須山さん。「自分らしい規模感とリズム」を武器に、今後も輝き続けることでしょう。

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